電動モビリティの「IP54防水」 表示の裏側と業界の実態
屋外で使う新しい乗り物として、電動モビリティや特定小型原付が身近になってきました。通勤や買い物で日常的に乗るようになると、晴れの日だけでなく、雨の日や濡れた路面でどこまで「防水」性能を信頼できるのかが気になります。いま市場に出回っている電動モビリティの多くは、防水性能として「IP54」と表示されていますが、このIP54は本当に雨の日でも安心して乗れるレベルなのでしょうか。電動モビリティの開発から販売まで手がけるFreeMileが、その意味と防水性能の実態を解説します。
現在流通しているほとんどの「こがない自転車」(特定小型原付)は、防水性能として「IP54相当」とうたっています。しかし、第三者機関による正式な認証を取得していない製品がほとんどです。
その理由は「IP54」レベルでは、性能が低いため認証取得のコストに見合わないためです。防水があるかのように見えますが、実際は屋外保管がNGである状態なのです。
IP54の防水レベルは「生活防水」 雨ざらしや長時間の雨には弱い
「IP54」の「5」は防塵性能が5級であることを示します。同級は、粉塵の侵入を完全には防げないが、動作に支障をきたす量は入らないというレベルです。
「4」の部分が防水性能を示しています。同級はあらゆる”飛沫”に耐えられる程度です。
そのため、この性能だと、小雨や水しぶきには対応できますが、長時間の雨や強い雨には耐えられません。わかりやすく言うと「生活防水」レベルで雨ざらしにしていると故障リスクが高まります。
同程度の性能表示をしているメーカーのほとんどが「雨天時の走行は推奨しません」と注意書きをつけています。
なぜ商品は日に日に増えていく一方で、防水性能はあがっていないのでしょうか。そこにはモビリティの構造上の問題があります。
電動モビリティの配線は、車体内部の制御系モジュールにつながっています。このモジュールには半導体が組み込まれており、水分や湿気に極端に弱いという性質があります。
ところが、現在流通しているモビリティの多くは、配線を通すために車体に穴を開ける構造を採用しています。その穴が水分の侵入経路となり、防水性能の確保が難しくなっているのが実情です。その結果として、内部に水が入り込み、故障につながってしまうケースが少なくありません。
屋外保管にも対応するFreeMileの防水性能
その一方で、FreeMileの製品は高い防塵・防水性能を実現しています。
「こがない自転車」の異名をとるevuco(イブコ)は「IP65」の国際認証を取得済み(第三者機関による証明あり)です。
「6」は粉塵が車体の中に入らない完全防塵。「5」があらゆる方向からの水に耐えるレベルです。これは、車体につなぎ目をなくした独自のワンフレーム構造で可能にしています。
上記の通りの性能のため、屋外保管が可能です。屋外放置環境での耐久性が実証済みで米国のシェアリングサービスで6万台使用されたという実績もあります。
超安定型三輪モビリティ・aticoは「IP55」(認証は申請準備中)。防塵の5級は有害な粉塵の侵入を防ぐレベルとなっています。配線内蔵化の特許技術(特許第7115791号)を適用して設計しているため、屋外保管が可能です。
FreeMileの特許「配線内蔵化構造」とは
FreeMileが特許を取っている「配線内蔵化構造」とはどんなものなのでしょうか。
特許番号:特許第7115791号
出願番号:特願2021-155403
出願日:2021年9月24日
発明の課題:ケーブル類を車体フレーム内に収容するとともに、ケーブル類に基づく雨水等の車体フレーム内への侵入を防止できる電動スクータを提供すること。
車体フレームは、壁部とその壁部に覆われた中空部を有するものに。ケーブルは中空部に収容され、壁部を貫通しない構造にしています。この技術によって、雨水等の侵入経路を完全になくしています。
従来技術との比較表
| 項目 | 従来の電動モビリティ | FreeMileの技術(特許第7115791号) |
|---|---|---|
| 配線方法 | 車体に穴を開けて配線を通す | 車体フレームの中空部に配線を収容 |
| 壁部の貫通 | 貫通する | 貫通しない |
| 水の侵入経路 | 穴から水が侵入する | 侵入経路がない |
| 防水性能 | IP54程度(生活防水) | IP55/IP65(高い防水性能) |
| 屋外保管 | 不可 | 可能 |
IP規格の比較表
| IP規格 | 防塵性能 | 防水性能 | 屋外保管 | 雨天走行 | 認証状況 |
| IP54 (一般的な製品) | 5級 (粉塵が若干侵入) | 4級 (水飛沫に耐える) | 不可 | メーカー非推奨 | ほぼ未取得 (自己申告) |
| IP55 (FreeMile atico) | 5級 (粉塵が若干侵入) | 5級 (噴流水に耐える) | 可能 | 可能 | 申請準備中 |
| IP65 (FreeMile evuco) | 6級 (完全防塵) | 5級 (噴流水に耐える) | 可能 | 可能 | 国際認証取得済 |
構造や認証を確認することが長く乗る秘訣
電動モビリティでうたわれている「IP54」という防水は、その実態として自己申告がほとんどであり、第三者機関による認証を取得していない製品が大半を占めています。本来の性能は水飛沫に耐える程度の「生活防水」レベルで、屋外保管には適しません。それにもかかわらず、防水性能が十分にあるかのような表現で販売されているケースも少なくなくはありません。
これに対してFreeMileは、配線内蔵化の特許技術(特許第7115791号)などによって、そもそも雨水の侵入経路を構造的に断つ独自構造を採用しています。ボディー表面の加工ではなく、構造そのものから防水を実現している点が最大の違いです。
開発から携わっているからこそ、知っている防水の本当のこと。「IP規格表示があるから安心」ではなく、構造や認証まで確認することが、電動モビリティを長く乗るための秘訣です。
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