バッテリー事故が多発の一方で情報開示するメーカーが少ない現状
近年、電動モビリティのバッテリー事故が増加しています。近年、電動モビリティのバッテリー事故が増加しています。経済産業省所管の独立行政法人「製品評価技術基盤機構」の調査では下記の統計が出ています。
- モバイルバッテリー関連事故: 1,860件
- そのうち火災: 85%
- 電動アシスト自転車での事故: 202件(死亡事故1件含む)
多くのメーカーが「安全です」「高品質です」と謳っていますが、具体的な情報を開示しているメーカーはほとんどありません。
FreeMileは、「製造国」や「ブランド」ではなく、具体的な情報開示でお客様に判断してほしいと考えています。
このブログでは、aticoに搭載されているバッテリーの情報を公開します。
aticoのバッテリー仕様
基本仕様
- 電圧: 48V
- 容量: 15Ah
- エネルギー容量: 720Wh
- 重量: 4.73kg
- サイズ: 325mm × 140mm × 90mm
セル情報
- セルメーカー: LG Energy Solution(韓国、世界シェア3位 13.6%)
- セル型番: INR21700M50LT
- セルタイプ: 21700型セル(INRタイプ)
- ライフサイクル: 1,000サイクル(通常の2倍の長寿命)
INRタイプとは?・・・
- I: リチウムイオン(Lithium Ion)
- N: ニッケル系正極材料(NCA/NMC)
- R: 充電可能(Rechargeable)
ニッケル系正極材料(NCA/NMC)の特徴:
- ✅ 高い熱安定性
- ✅ 高エネルギー密度と安全性を両立
- ✅ Tesla Model 3/Y、Porsche Taycan、BMWが採用
国際安全規格(※)
- ✅ UN38.3試験: 全8項目合格(高度、熱、振動、衝撃、外部短絡、衝撃/圧壊、過充電、強制放電)
- ✅ IATA DGR(2025年版): 航空輸送規格準拠
- ✅ IMDG CODE(2024年版): 海上輸送規格準拠
※リチウムイオンバッテリーの安全性を確保するため、国際的に定められた試験や基準のことです。用途(輸送、販売、製造など)や地域(日本、欧米など)に応じて、様々な規格が存在
※ 日本国内規格のPSEマークは申請準備中
日本製バッテリーは本当に安全なのか?
世界のバッテリーメーカーシェア(2024年)
「日本製=安全」というイメージが先行していますが、バッテリー業界ではやや異なります。例えば、世界の電気自動車市場で見ると、シェアは下記のようになっています。

- 🇨🇳 CATL(中国): 37.9%(世界1位)
- 🇰🇷 LG Energy Solution(韓国): 10.8%(世界3位)
- 🇯🇵 国内大手メーカー: 3.9%(世界5位)
Tesla、Porsche、BMW、GM、Fordが採用しているのは、韓国LGまたは中国CATL製です。
日本製バッテリーのリコール実績
国内メーカーでは、過去10年で約30万台規模のリコールが発生しているのが現状です。
- 2016年: ノートPC用バッテリーで発熱・発火リスク
- 2018年: 電動アシスト自転車バッテリーで発火リスク
- 2021年: 電動工具用バッテリーで過熱リスク
リコールがあること自体は問題ではありませんが、海外製ではない日本の製品でも発火や過熱リスクはあるのです。
なぜFreeMileはLG製21700セルを選んだのか
FreeMileは、「製造国」ではなく「具体的な安全基準と採用実績」で判断しました。

LG INR21700M50LTの採用理由
- ✅ Tesla Model 3/Y、Porsche Taycanと同じセル
- ✅ 1,000サイクルの長寿命(”LT” = Long Life、通常の2倍)
- ✅ UN38.3試験全8項目合格
- ✅ 世界シェア3位(10.8%、国内大手の約2倍)
- ✅ 21700型セル(18650型より高性能)
- ✅ INRタイプ(ニッケル系正極材料)で高い熱安定性
18650型セルと21700型セルの違い
多くの小型モビリティは18650型セル(約20年前の技術)を使用しています。一方、aticoは21700型セルを採用しています。
| 項目 | 18650型セル | 21700型セル(atico) |
| 容量 | 約3,000mAh | 5,000mAh(+67%) |
| 放熱面積 | 小さい | 42%増加 |
| 内部抵抗 | 高い | 30%低減 |
| 最大放電電流 | 低い | 最大188%増加 |
| 採用例 | 小型モビリティ | Tesla、Porsche、BMW |
18650型セルで長距離仕様を実現するには?
→ セル本数を増やす → 密集度が高まり発熱リスク増加 → 振動・落下に弱い
21700型セルなら?
→ 少ないセル本数で高容量 → 放熱性能が高い → 振動・落下に強い
温度管理と落下時の対応
温度管理
- 推奨保管温度: 15-25℃
- 最大動作温度: 70℃
- 禁止事項: 70℃以上の高温環境での使用、焼却
落下時の対応(重要)
aticoを落下させた場合は、即座に使用を中止してください。
- ❌ 点検サービスは提供しません(内部損傷は外観では判断不可)
- ✅ FreeMileへご連絡ください → 有償交換または回収対応
なぜ点検しないのか?
→ バッテリー内部の損傷は外観検査では判断できず、時間差で発火するリスクがあるためです。
緊急時の対応手順
火災が発生した場合
- 小規模火災: 消火器または大量の水で消火
- 消防へ通報: リチウムイオンバッテリー火災であることを伝える
- 消防隊員: ガスマスクと全身保護服を着用
電解液が漏れた場合
- 接触を避ける: 皮膚や目に触れないよう注意
- 換気: 室内の場合は十分に換気
- 人員避難: 周囲の人を安全な場所へ誘導
- 吸収: 乾燥砂または土で吸収し、適切に廃棄
- 洗浄: 洗剤と水で汚染箇所を洗浄
私たちの姿勢
FreeMileは、「日本製」や「海外製」というラベルではなく、具体的な情報開示で判断していただきたいと考えています。
FreeMileが公開する情報:
✅ セルメーカー名と型番(LG Energy Solution INR21700M50LT)
✅ セルタイプ(INRタイプ:ニッケル系正極材料)
✅ 国際安全規格(UN38.3、IATA DGR、IMDG CODE)
✅ 温度管理基準(推奨15-25℃、最大70℃)
✅ 落下時の対応方針(即使用中止→交換/回収)
✅ 緊急時の対応手順(火災・漏液時)
お客様へ
「日本製バッテリーだから安全」ではなく、「どのセルを使い、どの国際規格に準拠し、どう管理しているか」で判断してください。
FreeMileは、具体的な情報開示でお客様の判断をサポートします。
バッテリー選びのチェックリスト
- ✅ セルの種類と型番が明記されているか?
- ✅ UN38.3やPSEなどの国際規格に準拠しているか?
- ✅ 落下時の対応方針が明確か?
- ✅ 緊急時の連絡先が明示されているか?
参考文献
NITE(製品評価技術基盤機構): https://www.nite.go.jp/data/000158238.pdf
東京消防庁: https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/nichijo/denkaseihin
SNE Research「2025 Jan Global Monthly EV and Battery Monthly Tracker」: https://www.sneresearch.com/en/insight/release_view/371/page/0
aticoの販売開始は来春を予定しています。
詳細は随時、FreeMile公式サイトでお知らせいたします。

